杖歩行が困難な患者の看護計画の例です。患者情報は架空の人です。
看護上の問題点
杖歩行の際、ふらつきがあり転倒の恐れがある。
問題点の経緯と理由
変形性膝関節症にて入院し、人工膝関節置換術の術後、膝の変形は改善。
しかし、歩行時の右膝疼痛と、杖歩行の方法の理解が未熟なため、転倒のリスクが高いと考えられる。
1日1回1時間のリハビリテーションを行っているが、日中ベッド上にて臥床していることが多い。自主的な関節の可動を行わないと、関節の可動が制限されたり筋力の低下に伴うADL減少にも繋がり、杖歩行時の転倒リスクも高くなってしまう。
杖での歩行が安定し、自立しての歩行が可能となれば独歩でのトイレ移動も可能となり退院後の生活の安定にも繋がる。
看護計画の目標
○月○日まで歩行時の転倒がなく病棟生活を送ることができる。
看護計画のOP
バイタルサイン
体温、脈拍、呼吸数、血圧、SPO2
足背動脈拍動触知
全身状態
- 四肢の冷感・チアノーゼ・創部の熱感
- 疼痛の有無と程度、創部周囲の発赤
- 腫脹の有無と程度、痺れの有無
- 足関節の底背屈運動の可否
- 浮腫の有無
- 胸痛、呼吸苦の有無
- 排泄の回数
- 夜間の睡眠状況
歩行状態
- 歩行距離と時間
- 蛇行の有無と程度
- 杖の使用状況
- 歩行後の疲労と疼痛の有無
- リハビリ状況
内服薬
消炎鎮痛薬使用の有無
看護計画のTP
①筋力トレーニングを行う。
歩行に必要な筋肉を強化するために行う。
リハビリがAMの場合はPMに、リハビリがPMの場合はAMに行い、入浴や食直後は避けて行う。
■ 大腿四頭筋の運動
ベッド上臥床位にて行う。
- 膝下にクッションを入れ、膝の裏で押さえつける。
5秒間押さえつけたら緩める。
3~5分間これを繰り返す。 - 片足の膝を曲げ、もう一方は伸ばしたまま
膝を伸ばしたまま15cm程度浮かせる
10秒程度保持する
3~5分間程度繰り返し行い、左右を入れ替えて同様に行う。
■ 椅子または車椅子にて座位で行う訓練
椅子に腰掛け、膝を伸ばして足を上げたまま10秒間保持する。
左右交互に5分間行う。
※好きな音楽などをかけながら、リラックスして行う。
②アイシングを行う。
1日1回トレーニング後、またはリハビリ後に創部に熱感がある場合アイシング行う。
- 膝関節周囲に包帯またはタオルを巻く
- 氷嚢またはビニール袋に水を入れたものを置き、包帯で巻き固定する。
- 20~30分間アイシングを行う。
[アイシングの感覚]
1分~冷感
5分~局所感覚消失
15分~深部血管の拡張
アイシング後は入浴、過度の運動を行わないように注意する。
③歩行訓練を行う
1日1回以上、廊下で行う。
杖を正しく用いて歩行を行うため、リハビリでも歩行を行っているため疼痛、苦痛の訴えが強い場合は中止。
ゆっくりと杖(右手) → 左側 → 右側の順で歩く。
四点杖は一本杖では歩行が不安定な方、筋力低下や麻痺のある方に有効
④車椅子にて院外の散歩を行う
- 日中の臥床時間を減らすために行う
- ベッド上や病棟から外に出ることでリハビリや入院生活に対する意欲の向上を図る。
- 体調、疼痛の状態により、院内にて行う。
院内では杖歩行とする。
看護計画のEP
①日常生活動作の指導
- よく使うものは立ったまま取れる位置に置くよう工夫する。
- 買い物や10kg以上の荷物を運ぶときはカートを使用する。
- ズボンを履く際は椅子に腰掛けて行う。靴下も同様に行う。
- 浴室などではマットを敷くなどし、転倒を防ぐ。
また、手すりなどにつかまり浴槽に入るよう注意する。
体を洗う際もシャワーチェアなどを用いて関節に負担がかからないようにする。 - あぐら、正座、しゃがむ動作は避ける。
②体重コントロールの必要性の指導
体重の増加はそれを支える膝への負担が増加するため、肥満には注意する。
③運動療法の必要性の指導
関節可動域の拡大、維持のため、自宅でも行える運動を続けることが望ましいことの説明。
④他患者との交流を図る
院内・外散歩時、日中デールームに離床したとき、他患者と交流を持つ事で、闘病意欲の向上と積極的な離床の促進になる。
看護計画の評価
疼痛の軽減に伴い、歩行することへの意欲向上があり、さらに杖歩行の際の足を出す順番の指導と見守り歩行の許可が出たことによる歩行頻度の増加で、ふらつきの改善もみられた。
杖歩行回数の増加は足の出す順番の理解にも繋がった。
今後、退院し自宅に戻った際も自主的なトレーニングを行う必要があるため、指導に繋げていきたいと思う。