PCR検査とは確認可能な量にまでDNAを増幅させて検査を行う方法
PCR法は超微量な検体(理論上DNA鎖が一対でもあれば)でも増幅させる方法を用いているため検査することができます。
そのため、顕微鏡で確認できない各種ウィルスの同定、目的遺伝子の変異の有無、本人の同定、親子鑑定などの検査を行うことができます。
ウイルス、抗酸菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出や同定などに使用されます。
2020年現在においては新型コロナウィルスの同定にも使用されています。新規のウィルスが確認されると性状を用いた検査キットなどが開発されていない為、DNAの配列を直接確認するPCR法が使用されます。
微量な検体でも鑑定でき、あまりにも感度が高いため操作中に他の検体が混じると正確な検査が出来ないため検体の取り扱いは注意します。
DNA鎖の構造
DNA鎖は4種類のアミノ酸からなる2本鎖のらせん構造をしています。
4種類のアミノ酸(ヌクレオチド)は以下の4種類。
A:アデニン Adenine
T:チミン Thymine
G:グアニン Guanine
C:シトシン Cytosine
それぞれの結合はA-T G-C のみであり
A-Gという結合はありません。
それぞれは相対する形になっています。
そのため2本鎖のうち片方の配列が分かっていれば、もう片方の配列もおのずと決定されます。
これらATGCの並びを「塩基配列」と呼びます。
この塩基配列を読み取ることで遺伝子の変異の有無、ウィルスの同定などの検査が可能になります。
PCR法の原理
PCR法(Polymerase Chain Reaction ポリメラーゼ連鎖反応)は温度管理によってDNA鎖を爆発的に増幅させる方法です。
DNA(又はRNA)検体を準備
ウィルスや人体などの検体中のDNA(RNA)を抽出します。
細胞内の核に含まれているため超音波破砕などを使用して抽出します。
反応前DNAの状態
4種類のアミノ酸(ヌクレオチド)は相対する連鎖のため上記のような状態です。
ここに耐熱性DNAポリメラーゼ(DNA鎖を合成を活性化)、検査したい目標の配列部分に合わせたプライマーを加えます。
PCR法:第1段階 1本鎖にほどく(変性)
2本鎖の状態であるヌクレオチドは90℃~95℃で加温すると1本鎖にほどけます。
プライマーの作成
プライマーは短い4種類のアミノ酸(ヌクレオチド)でできており、人工的に作成します。
この時調べたい配列付近の範囲を含めたプライマーを設定しますが、
この設定されたプライマーが他の別の場所にもあるとそこにもひっついてしまいます。
プライマーの設定にはユニーク(他とは違い唯一であること)であることが重要です。
プライマーは目的の範囲を含んだ2つで1セットで使用します。
また、調べたい範囲もユニーク(他とは違い唯一であること)である必要があります。
PCR法:第2段階 プライマー付着(アニーリング)
温度を50℃~68℃に下げるとプライマーが付着します。
ATGCの相対的な連鎖のため、ほどけたそれぞれの配列に目標の配列の範囲を囲む形でプライマーが付着します。
PCR法:第3段階 伸長
次に温度を70℃~72℃に上げると耐熱性DNAポリメラーゼの作用によりプライマーを始点としてDNA鎖が伸長していきます。
この第1段階~第3段階を1サイクルとし、例えば25サイクル繰り返すと目標のDNA鎖は少なくとも10万倍に増幅させることができます。
この爆発的に増えたDNA部分に蛍光試薬などを付与して検査することができます。
温度管理を自動で行うPCR用の機器なども開発されているため、短時間で高感度の検査を実現することができます。