妊娠期/妊婦健康診査項目

妊娠期における妊婦健康診査の測定(血液検査,尿検査,血圧測定,浮腫など)、妊娠期の体重の変化、妊娠期の心臓、妊娠期の血管、妊娠期の浮腫、妊娠期の血液検査項目およびその注意事項など。

目次

検尿による妊娠検査項目

ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の免疫検査

尿中のヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)を試薬を用いて免疫学的に検出する。

hCGとは…絨毛細胞から分泌され、着床周辺期の黄体機能を助けるホルモンである。尿中、血中にて移行するため検出できる。

排卵後15日前後で検出可能。妊娠4週頃からほぼ100%で陽性になる。

※hCG産生腫瘍が絨毛疾患でも陽性となるため、鑑別も必要。

その他の尿検査

尿蛋白

妊娠高血圧症候群、腎機能低下の早期発見

尿糖

妊娠糖尿病の検出。尿糖が2回以上陽性であった場合、空腹時血糖・糖負荷試験を行う。

妊娠期の体重の変化

妊娠中は体重が増加し、非妊娠期に比べて7~13kg増加する。

妊娠初期の体重増加は皮下脂肪によるものであり、1週間で500g以上の増加がある場合は妊娠高血圧症候群に注意する。(水分貯留による体重増加)

体重増加の内訳

胎児~3.0kg4kgほど
胎盤~0.5kg
羊水~0.5kg
子宮~1.0kg8kgほど
乳房~1.0kg
血液・組織腋~3.0kg
貯蔵脂肪~3.0kg
計 12kgほど

妊娠期の血圧

妊娠に伴う循環器系の変化による血圧

妊娠期の心臓

  • 子宮増大により、横隔膜挙上のため心臓は左上前方に移動する。
  • 血液量が増加し、心臓への負担が増大・肥大する。
  • 心拍出量、心拍数が増加する。

妊娠期の血管

  • ホルモンの影響による血管壁の漿液性浸油、軟化が起こり静脈毛細血管の拡張による静脈瘤が起こる。
  • 血圧は非妊娠期とほとんど変化は無い。

妊娠初期

通常、血圧は非妊娠期と変化は無い。高血圧が認められる場合、高血圧疾患を疑う。

妊娠中期

高血圧は妊娠高血圧症候群の一症状であり、血圧測定は毎回行う。

妊娠期の浮腫

妊娠期の浮腫は下肢、まれに上肢や顔などに見られ、妊娠高血圧症候群の症状である。

人差し指、または親指で押し、圧痕が残るか、左右の差があるかどうかの観察を行う。

妊娠期の浮腫の診断

心疾患、腎疾患、肝疾患などの疑い、妊娠高血圧症候群との関連を観察。

浮腫の予防

  • 長時間の歩行、起立、イスに座るなど、同じ姿勢を保ち続けない。
  • 就寝時に足を少し高くする。
  • 足背の運動など、体液の循環を促す。
  • 衣類による圧迫を避ける。
  • 食事の塩分を減らす。

妊娠期の血液検査項目

妊娠期に赤血球の生成は亢進するが、血漿量が著しく高くなる。水血症となり、赤血球量、血色素量、ヘマトクリット値はやや低下し続け、妊娠30週ほどで最低値となる。

※血色素量が11.0g/dl未満の場合は鉄欠乏性貧血。

白血球量の増加は10,500個/ul までの範囲

フィブリン(血液凝固)量の増加、血漿蛋白の低下などで赤血球沈降速度は亢進。

妊娠初期の血液検査

血液一般検査

白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値などの一般血液検査にて健康状態の把握。

血液型検査

不適合妊娠、高ビリルビン血症の危険性の検出

感染症検査

妊娠・出産は出血を伴うため本人や医療従事者が認識し、感染の拡大を防ぐ。

風疹・梅毒・B型肝炎・C型肝炎・HIV・トキソプラズマ感染など妊娠中絶の可能性がある病気は検査による結果説明には十分な配慮が必要である。

妊娠中期の血液検査

胎児に鉄分を分配し、徐々に循環血液量が増える。血液は希釈され、妊娠性貧血になりやすい。

血液の生理的希釈障害、血小板数が推移する場合がある。

ヘモグロビン値、平均赤血球濃度、血小板数などに留意する。

妊娠糖尿病のスクリーニング検査項目

  • 妊娠中は耐糖能異常が起こりやすい。
  • 高血糖が続くと、胎児のインスリン産生が増え巨大児になりやすい。
  • 臍帯切断による低血糖を起こし、新生児に障害が起こる可能性がある。

耐糖能異常は尿糖だけでは診断できないため、糖負荷検査を行う。

ブドウ糖負荷試験

血糖値が140mg/dl以上の場合、空腹時血糖を測定。その後ブドウ糖75gを飲んで60分後と120分後に再び採血をして血糖値を測定。

糖尿病型の血糖曲線と比較判定する。

糖尿病と診断された場合、内分泌科の受診を勧める。栄養士と協力し食事指導を行う。

食事指導による改善が認められない場合、インスリン注射が唯一の選択肢となる。

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