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浣腸の目的
浣腸は直腸に管を通してグリセリンなどの腸粘膜を刺激する液体を使用して、腸の蠕動運動を促成させ排便、排ガスを誘発させる。
グリセリンには便を柔らかく溶かし、滑りをよくする効果がある。
- 自然排便が難しいとき
- 腸管検査の前処置として
浣腸の種類
- 排便浣腸……便秘の解消のため
- 高圧浣腸
- グリセリン浣腸
- 駆風浣腸……排ガスを促進
- 滋養浣腸……直腸から栄養を吸収させる
- バリウム浣腸……大腸X線撮影の目的のため直腸からバリウムを注入する。
浣腸の留意点
浣腸は手技の誤りによる腸穿孔、血圧の変動、電解質バランスの変化などに十分留意して行わなければならない。
- プライバシーに配慮し、カーテンを閉めたり可能な限り人がいない時間に行う。
- すきま風による体温低下に備える。
- 便の形状、排便感の有無
浣腸の禁忌
- 脳圧亢進のある患者
- 虫垂炎
- 腸管内に出血、炎症、穿孔のある患者
- 血圧の変化が著しい患者
- 直腸、生殖器などの臓器の術後
グリセリン浣腸の必要物品
ディスポーザブル浣腸製剤による浣腸の場合。
- ディスポーザブルグリセリン浣腸
- 膿盆
- ディスポーザブル手袋
- 潤滑液
- 便器
- トイレットペーパー
- 防水シーツ
- タオルケット
- バスタオル
グリセリン浣腸の手順
- 患者に浣腸を行うことを説明し、同意を得る。(排便の有無も確認)
- 環境を整える。カーテンや人の気配など
- 物品の準備をする。
- 浣腸を容器ごと40℃程度の湯で温める。
- 患者の体位
- 患者は仰臥位に
- 腰部に防水シーツを敷き、臀部を露出させる。
- 左側臥位で、膝を立たせ臀部を突き出す様な体位をとる。
-
立位での浣腸挿入は危険
カテーテル挿入を安全に行えない。
挿入時の長さを認識しにくいため、過剰挿入などの危険がある。
体位の安定をはかりにくいため、しゃがんでしまった時にカテーテルで肛門部~腸壁を傷つける恐れがある。
- カテーテルの先端に潤滑液を塗る。
肛門部への刺激を抑え、なめらかに挿入するため。 - 患者には口呼吸をしてもらうよう説明する。
肛門括約筋がゆるみ、カテーテルを挿入しやすくなる。 - カテーテル部位を臍方向に挿入し、成人の場合6~10cmほどのところで止める。
※抵抗がある場合は無理に挿入しない。 - チューブ部を押し出しグリセリンをゆっくり注入する。
※急速に注入すると、注入した刺激により排便反射が起こる。
※腹圧によりカテーテルが押し出されやすいため、片手で押さえる。 - 液が注入されたら、トイレットペーパーで押さえながら、静かにカテーテルを抜き膿盆に捨てる。
- 最低3~5分ほど排便を我慢してもらう。
根拠:排便が早すぎるとグリセリンのみが排出されてしまう。 - 患者を仰臥位にし、便器を当てる。
- ナースコールとトイレットペーパーを準備し、気分は悪くないかなど、観察を行った後 患者を一人にする。
- 排便が終わったら、肛門・陰部を拭き便器をはずす。
- 防水シーツやタオルケットなどを除去し後始末を行う。
- 排泄物の量、性状、色などの観察。
グリセリン浣腸の観察ポイント
- グリセリンが浸透し腸蠕動運動が活発になるまでの時間は人によって異なる。3分~10分程度である。
- カテーテル挿入の際、抵抗や肛門痛、不快感、吐き気、腹痛などの有無の確認。
- 実施後の便の量、性状、腹痛、腹部膨満感、残便感、吐き気など、顔色や不快感などの確認。
- 高齢者、虚弱患者ではショック症状、脱水症状など注意深くバイタルサインを確認する。