共通する基本的な看護
身体面における看護
血液疾患の主な症状として、易感染症状、貧血、出血症状などがあり、全身症状の観察が必要である。
- 全身状態の観察→異常の早期発見
- 合併症の予防(骨髄抑制期、血小板減少・凝固因子異常の場合、特に)
- 転倒予防
- 患者が主体的に治療に参加できるよう症状マネージメントを行う。
心理面における看護
病気の告知による死や治療に対する不安のケア。
治療開始時
教育的関わり、症状緩和、信頼関係の形成と維持。
治療を繰り返す場合
化学療法へのセルフケアの確立。
再発への不安、治療の見通しの不確かさ → 気持ちが揺れやすく傷つきやすい。
リスクの高い治療の場合
意志決定に対する支援
治療効果が乏しくなってきた場合
患者の考えに傾聴し、希望を尊重する。
社会的側面に対するケア
社会的役割が大きい時機の発症が比較的多いのが特徴。
必要時にはソーシャルワーカーに相談し、社会的側面を理解、可能な限り調整を行う。
主な症状に対する看護
骨髄抑制三大症状として以下の3つがある。
貧血症状への看護
体力消耗を防ぎ、抵抗力を維持した適切な看護を必要とする。
安静と保温
動悸、息切れ、めまいが起こらない程度に安静(酸素消費量の増加を防ぐ)とする。
新陳代謝が低下すると四肢が冷え始める。
着衣による体温の発散を防ぐ。
室温に注意し、必要に応じて温罨法、足浴を行う。
清潔
保清の援助、入浴はぬるめのお湯で短時間で行う。
便秘は避け、トイレは洋式で行う。
食事
造血を促すための食事(タンパク質、鉄分、ビタミン)指導を行う。
それぞれの症状に対する看護
- 呼吸促進、心悸亢進、心拍数増加
→ 活動の制限、安静に - めまい、耳鳴り、立ちくらみ、急な起き上がり、長時間の起立による失神
→ 安静、ゆっくりした動作、転倒予防、歩行時の付き添い、頭を低くする、着衣を緩める。 - 頭痛
→ 気持ち良い程度に冷やすと疼痛軽減に - 口内炎、舌炎
→ 刺激の少ない嗽(うがい)薬、口腔内の清潔
疼痛には口腔用の塗り薬や噴霧薬
診察の介助
頻繁な採血と輸血がある場合は、正確な方法、介助で苦痛を軽減する。
原因や病状を明らかにするための採血、骨髄穿刺の場合も適切な準備と介助を行う。
輸血施行時、指示の確認。(種類と単位数)→ 患者・家族に説明を行う。
感染へ配慮した看護
白血球、免疫グロブリンの低下など
免疫抑制剤使用による副作用
感染を起こすと重篤な疾患になりやすく死への転帰となりうる。
感染の徴候をよく観察し、早期発見に努める。
感染予防
- 食前後、就寝前の歯磨き
歯ブラシが困難、または出血傾向がある場合、含嗽を行う。
水だけでもよく、嗽薬を使用する場合は指示に従う。
含嗽…(日中は2時間ごと、夜間は覚醒時に)
口腔内の清潔、湿潤を保つ。
刺激の強い食事を避け、口腔内の粘膜を傷つけないように保つ。 - 排泄による汚染
排泄時に肛門部は不潔になりやすいため、清拭、洗浄など清潔の保持。
肛門周囲膿瘍などの有無、観察 - 手指の衛生、標準予防策
感染の危険性が高い場合、面会の制限を行う。
拘束感、重症感、孤独感 などに対して気分転換を行う。
生活環境の整備
細菌を持ち込まない。日常的清掃 - 口内炎時
疼痛のコントロール、口腔内の清潔保持、食事の工夫 - 発熱時
体力温存できるよう日常生活の援助 - 感染予防の教育
患者が感染予防の必要性を認識できるよう指導
感染予防行動、感染しやすい部位、症状などの説明
家族への指導など
出血症状への看護
血小板減少、血液凝固障害、薬の副作用など。
出血の傾向が見られたら報告・安静・可能な部位は圧迫止血する。
皮下出血予防
- 室内の整理整頓…思わぬ転倒、打撲などの予防(起立性低血圧、めまいなど)
- 深部の圧迫を防ぐ
- 下着、靴下、着衣のゴムは緩め
- 清拭、洗髪、入浴時は強くこすらない
鼻出血、気道出血の予防
鼻を強くかまない。咳は小さく
マンシェットの加圧
マンシェットの加圧は最低限に。注射時には必ず止血を確認。
口腔内出血の予防
口腔内は止血が困難であるため、固い食べ物、歯ブラシ時に注意。
口腔内出血がある場合
- 血液を吐き出させる
- 氷水を含ませる
- ガーゼでの圧迫
上記でも止血しない場合、血管収縮薬を含ませたガーゼ、綿球で圧迫。
口腔内貯留の血液の臭気での嘔気、嘔吐誘発があるため、含嗽などで除去する。
便秘時、咳による出血
便秘時の怒責、激しい咳が出血を誘発する(脳出血、肺出血)
便通を整える。鎮咳剤の使用
出血に対する教育
- 血小板の数値と意味を説明
- 患者自身が出血傾向の程度を把握し、予防行動につとめさせる。
- 皮膚の乾燥、摩擦、圧迫による損傷や出血を防ぐ
- 歯肉、痔核、鼻腔、結膜などからの出血防止
- 転倒防止
- 点状出血などの皮膚症状
- 止血時間が通常よりかかる場合、医師へ報告