筋肉内注射の目的
- 筋肉内部に薬液を注入し、毛細血管を経て血液中に吸収させる
- 筋層内は皮下組織よりも毛細血管が発達しているため、速やかに薬物が吸収される
- 静脈内注射の1/5、皮下注射の2倍
- 皮下注射と静脈内注射の中間の効果発現と持続時間を期待する場合
-
皮下注射よりも多くの薬剤注入が必要な場合。(一回5mlまで可能)
-
皮下注射では投与できない刺激性の強い薬液を投与する場合
-
油性の薬剤、懸濁液などの非水溶性の薬剤を投与する場合。
-
不活化ワクチンの投与などで使用されることが多い。
筋肉内注射の注意点
- 薬剤の効果と副作用を確認する。
- 患者のアレルギーや注射禁忌部位の有無を確認。
- 血管や神経の走行を考慮し、血液の逆流や、針の刺入部から抹消にかけての痺れ感が生じた場合は直ちに針を抜いて別の場所に行う。
- 血液が混入した場合注射器・薬液は破棄して新しいものを使用。
- 針を刺した時や、薬液の注入中に激痛の訴えがあった場合も直ちに中止する。
※患者の訴えを穿刺による痛みと思い込んだことで、患者が右橈骨神経麻痺になってしまった事例などがある。
観察ポイント
実施前
- 薬剤を準備し5Rの確認を指差しで確認したか。
- 他の看護師とダブルチェックを行ったか。
- 指示内容が患者にとって適切であるかアセスメントしたか。
実施時
- 痺れ感が無いか。
- 気分不快等が起きていないか。
必要物品
- 指示書、注射用トレイ、薬剤(アンプル・バイヤル)、注射針、シリンジ、アルコール綿、膿盆、医療廃棄BOX、手袋
筋肉注射の注射位置

肩峰から三横指下の三角筋中央部
手順~準備~
- 指示簿の記載内容を確認する。※誤薬防止のため5R の確認を行う。
- 薬剤の作用機序、効果と副作用、常容量、与薬方法と、その患者における与薬目的、指示量、与薬方法を照合してアセスメントする。※指示の誤りによる誤薬を防ぐ
- 患者の年齢、体重、薬物過敏症、既往歴、症状などに対して、与薬の指示内容が適切であることを確認する。
→副作用等の問題が起きないように、事前に確認する。 - 与薬に関する医師から患者への説明内容を確認する。
→患者に与薬の必要性を説明するに当たり、医師からの説明内容と患者の反応を知っておくことが大切である。
- 患者に筋肉内注射の必要性、方法を説明し同意を得る。
→注射は成体に直接的な影響を与え、痛みも伴うため、患者の理解と承諾を得る必要がある。
- 衛生的手洗いを行う。→感染予防
- 薬剤の確認を行う。
- 無菌的に注射器に針を接続する。
- アンプルの頸部をアルコール綿で消毒し、カットする。
バイアルのキャップをはずし、ゴム部分をアルコール綿で消毒する。 - 注射器で必要量吸い出し、空気を抜いてキャップをする。

手順
上腕
-
指示簿と患者の氏名部屋番号が一致しているかを確認し入室する。
→患者の取り違えを防ぐため、必ずフルネームで確認し出来れば患者自身に名乗ってもらう。 - 注射部位を確認し、アルコール綿で中心から外側に向けて消毒する。
※注射針の刺入部分が最も清潔になるようにするため消毒する。 - アルコールが揮発し乾くのを待つ。その後45~90度の角度で刺入する。
- 内筒を少し引いて逆流しないことを確認。血管刺入の有無の確認。
※逆流がある場合すぐに抜き部位をかえる - 片手で針基部をもって、注射針を固定し、逆の手で内筒を押して薬液を注入する。
- 刺入部にアルコール綿を当てて素早く注射針を抜くと同時に刺入部を圧迫し、アルコール綿を当てたまま注射部位を少し揉む。※揉むことで毛細血管から薬液が吸収されやすくなる。
- 注射器にはリキャップはせず、医療用廃棄ボックスに捨てる。
- 止血されたのを確認し絆創膏を貼付する。
- 気分不快が無いか患者に確認する。
注射の効果を確認し、副作用などが出た場合の早期発見に努める
臀部 ~クラークの点~
1~5までの手順を上腕と同様に行う。
6.止血確認後、衣服、掛け物を整える。
四分3分法
- 臀裂、臀溝、腸骨稜最高部の線を結び四角形を作る。その中心点をとる。
- 中心点から45度の角度で外側上方に線を引き、外側から3分の1の点を注射部位とする。
振り返り内容(主を実施して振り返る)
注射器の準備
- 感染を防ぐため、清潔に心がける。
- 指示書を確認し、薬剤の間違いを起こさないようにし、医療事故を未然に防ぐ。
- 感染の予防に心がける。
- アンプル、バイアルの外側は吹けるであり、吸い上げ時に針が触れるため、清潔にする。
- できるだけアンプルの切り口に針先が触れないように注意する。指示書の量を正確に吸い出す。
筋肉注射の手順
上腕
- フルネームで名前を言ってもらい、指示書の名前と一致する事を確認する。
現在の体調を確認する。 - 刺入部から外側に向けて円を描くように消毒し、刺入部が一番清潔になるようにする。
肩峰より下に三横指空けた部分が刺入部位。
消毒後は不潔になるといけないため触れない。 - 刺入角度は10~30度。
- 刺入部をつまむように持ち、針先3分の1を残して刺入する。
注射器はペンを持つように。 - 血管に刺さっていないか確認するため、少し内筒を引き、逆血の有無を見る。
電撃痛や放散痛の有無を確認し、神経損傷を防ぐ。 - しっかりと圧迫止血を行う。
※通常、針の長さは3.8cm 22G~25G だが、肥満の患者の場合届かないこともあるため、張りの選択は経験だけではなく筋肉量をアセスメントして行う事が望ましい。
臀部
- プライバシーに配慮し、不必要な露出を避ける。
- 他は上腕と同様
四分三分法
~間違って覚えていた部位名~
臀溝は臀部の下部、臀裂が割れ目。
患者役を体験して振り返る
注射される側になります。
- フルネームで名乗るのは多少煩わしくは感じるが患者取り違えを防ぐためには必要だと思う。
- 消毒後、刺入する時に再度触って位置確認をしていたが、それでは不潔になるのではないかと感じた。
- 実際に刺される訳ではないのだが、持ち方やためらいがあると患者に不安を与えると感じた。
- 内筒の引き忘れ、しびれの確認なしなど、患者は知らないが、行わないと重大なトラブルを招くため、しっかり確認するよう心がけるべきと感じた。
- 注射法の種類や、筋肉注射でもマッサージしない場合もあるため、薬液ごとの特性を今後しっかりと学んで覚えていきたい。
- 模型ということもあり、プライバシーへの配慮が今回はあまりされていないと感じた。半分だけの模型ならばもう少し違ったのかもしれない。
全体を通しての感想
注射器を使用しての演習は、模型が相手だと分かっていても、緊張してしまい、思い通りに行えなかった。今後資格を取り患者様を相手にしたときにしっかり行えるよう、知識、技術を磨きたい。
上股・三角筋中心の解剖図

臀部・中臀筋の解剖図

神経損傷について
三角筋の場合
注射部位近辺に、「腋窩神経」「橈骨神経」があり、刺入部から抹消にかけてしびれの有無を確認せずに行うと、橈骨神経麻痺を起こす危険がある。
中臀筋の場合
注射部位近辺に、「上臀神経」「下臀神経」「坐骨神経」があり、正しく部位の選択を行うようにしないと、麻痺を起こしてしまう。
硬結について
同じ部位に何度も注射をしたり、長時間刺入したままにすると起こる。注射後によくマッサージを行うことで、薬液の吸収を促進させ、腫脹や、硬結を防ぐことができる。
筋肉内注射後のマッサージ効果について
目的
薬剤を広く拡散して、吸収を促進させる。
薬剤の局所貯留によっておこる硬結や疼痛を軽減させる。
※浸透圧の高い注射薬の場合、薬剤による組織の炎症と、細胞から水分を吸収することにより硬結を生じやすため。
アナフィラキシーについて
アナフィラキシーとは
異種タンパク、薬剤などで感作され、IgE型抗体が産生されている状態。同じ抗原が侵入すると数分後に全身性の激しい症状が出る。
症状
- 呼吸困難
- 腹痛
- 下痢
- 紅斑
- じんま疹
- ショック
- 意識障害
- 多尿
- 嘔吐
- 浮腫
などがあり、死亡することもある。
対応
- アドレナリンの筋肉注射。気道確保を行う。
- 輸血をし循環血液量の確保
- ステロイド剤は即効性はないが、遅発型反応や喘息症状の抑制に有効である。
- ヒスタミン拮抗薬(H1とH2拮抗薬を併用)は、皮膚症状の軽減に有効
- 血圧が上昇しない場合はドーパミン塩酸塩を用いる。