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原発性胆汁性肝硬変の病態生理
- 中等大の肝内胆管が慢性的に破壊される疾患である。
- 肝硬変と名称があるが、初期病変を含めてこの病名が用いられる。
- 原因は自己免疫機能が考えられるが、明確な病院は解明されていない。
- 中年以降の女性に多く、初期症状として皮膚の掻痒感が最も多い。
- 疾患の進行により黄疸、全身倦怠感が出現、やがて肝硬変、さらに非代償性の肝硬変に陥り、腹水、門脈亢進症などを呈する。
- 病理学的には慢性非化膿性破壊性胆管炎が特徴的であり、門脈周囲にリンパ球の浸潤、非乾酪壊死を認める。
- 血清学的検査では、抗ミトコンドリア抗体(M2抗体)が出現し、抗平滑筋抗体も50%弱の症例で陽性となる。またIgMの上昇
原発性胆汁性肝硬変の検査・診断
肝機能検査、画像診断(超音波、CT、MRI)、腹腔鏡下肝生検を行う。
血液生化学検査
タンパク質合成能
Alb低下、コリンエステラーゼ低下、フィブリノーゲン低下、A/G比の逆転
脂質合成能
コレステロール低下
解毒能
ビリルビン、 ICG15分値上昇
肝細胞の変性、壊死
トランスアミナーゼ、AST(GOT)、ALT(GPT)上昇
毛細胆管圧
アルカリフォファターゼ上昇、γ-GTP上昇
間葉系反応
γ-グロブリン増加、ZTT、TTT 陽性
原発性胆汁性肝硬変の画像検査
エコー検査
肝表面の凹凸、エコー像の不均一
腹部CT検査
肝左葉、尾状葉の腫大、肝右葉の萎縮、肝表面の凹凸
腹部MRI検査
CTと同様
原発性胆汁性肝硬変の腹腔鏡下肝生検
腹腔鏡所見…肝表面に多数の結節
肝生検組織像…小葉改築増
原発性胆汁性肝硬変の治療
確率した根治的な治療法はないため対症的治療となる。
安静療法、薬物療法が主となり、進行例では肝移植を行う。
安静療法
安静にすることで肝血流量の増加をはかり、肝細胞の再生を促進する。
代償期…QOL低下に繋がる安静は不要。食後1~2時間は安静を行う。
非代償期…この時期は、黄疸、腹水、浮腫、肝性脳症と肝不全症状が見られ、安静を強いられる。
薬物療法
確立した治療法はないが、有用性が認められているのはウルソデオキシコール酸である。その他対症的にベザフィラート、ビタミン製剤などを用いる。
肝移植
日本では脳死肝移植は少数なため、生体部分肝移植が多い。
適切な移植時期を選択することで5年生存率は70%を超えている。
原発性胆汁性肝硬変の看護
- 肝血流量増加のため、安静臥床の指導を行う。ただし、代償期は脂肪肝につながるため、歩行程度の有酸素運動は行う。
- 腸管からのアンモニア発生を防ぐため、排便コントロールを行う。
食後1時間程度は仰臥位による安静とし、右側臥床は避ける。 - 清潔保持、掻痒感軽減のため、2%重曹水やハッカ水で清拭を行う。(全身清拭)
- タンパク質合成作用低下による凝固因子減少や、脾臓機能亢進による血小板減少に伴う出血傾向に注意する。