前回ゴックンしたラーメンが胃に降りてきました。
胃に食べ物が入ると胃液が生成されます。
ラーメンを吸収するためには小さく千切って分子レベルでの小さなサイズにする必要があります。
胃液の成分
生成された胃液の種類は大きく分類して3種類あります。
①胃酸
塩酸 HCl でできており、強酸で微生物などを殺菌します。壁細胞から分泌される。
②ペプシノーゲン
蛋白消化酵素ペプシンの源(ゲン)となる物質。強酸下においてペプシンに変身する。主細胞から分泌される。
③粘液
胃内部は強酸であるため、胃壁を保護する必要がある。
この粘液はアルカリ性で中和しながら胃壁を守る。上皮細胞から分泌される。
【 豚肉のホルモン(豚の胃など)を食べたら消化されないのでしょうか? 】
ホルモンの状態になっているということは豚は死んでいます。死んでいると上皮細胞からアルカリ性の粘液が分泌されることが無く、強酸による消化が進みます。
胃の消化酵素
主細胞から分泌されたペプシノーゲンは強酸下においてペプシンに変身しました。
これはたんぱく質分解酵素:プロテアーゼの一種で、プロテイナーゼ proteinaseとペプチダーゼ peptidase などがあります。
ペプチド結合 (-CONH-)を持つタンパク質を分解するための酵素の総称です。
ではこれらプロテアーゼがタンパク質を分解していく様子を見ていきましょう。
タンパク質とは…
まず、タンパク質がどのような構造をしているか見てみましょう。
この中からまずはペプチド結合 (-CONH-)だけを探してみましょう。
この様に、ペプチド結合によってRの本体を繋げている構造になります。
この「R」とはアミノ酸の略式です。
アミノ酸の種類は20種類以上あり、これらアミノ酸を様々な順番で繋げることによって、多種多様なタンパク質を合成しています。
タンパク質とは、アミノ酸が多数結合してできた高分子化合物のことを言うのです。
アミノ酸の本体同士を繋いでいるのがペプチド結合だというわけです。
構造式は難しくても本体とそれを繋ぐ橋がわかれば、ほんとはシンプルなんです。
プロテアーゼによるタンパク質の加水分解
比較的低分子のタンパク質を切るペプチダーゼ(ペプチド結合を切るのでペプチダーゼ)でタンパク質を切ってみましょう。
タンパク質の分解には加水分解という方法が用いられます。
水を加えて(-H -OH)、タンパク質を切断します。
ブチンと切り離す。
切れたところを水(-H -OH)で補います。
出来上がり。
さて、ここで出来上がった端っこを見たことありますでしょうか?
第二回の官能基の表であった、アミノ酸の特徴を思い出してください。
アミノ基 | -NH2 |
---|---|
カルボキシル基 | -COOH |
【グルタミン酸の○○基】
ペプチダーゼによる加水分解によって分断した先っぽは、アミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)であることがわかります。
では、それぞれのもう片側の先っぽはどうなっているのでしょうか?
きちんとアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)で閉じられています。
タンパク質はアミノ酸を繋げたものだったので、タンパク質の端っこではアミノ酸っぽい構造をしていることがわかります。
アミノ酸の脱水縮合反応
胃での反応ではありませんが、せっかくなのでついでに脱水縮合。
タンパク質を合成する際には、アミノ酸とアミノ酸との間で脱水縮合反応を行います。
水(-H -OH)を脱して縮合します。
アミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)からそれぞれ -OH と -H を引き剥がします。
ひっつけて出来上がり。
これを繰り返すことで高分子タンパク質を生成することができます。
先ほどの加水分解と逆の工程を辿っているだけです。
胃の酵素:リパーゼ
胃液には脂質を分解する酵素、リパーゼ lipase も含まれています。
これもプロテアーゼと同様に加水分解をして大きな分子構造をブツブツと千切っていきます。
脂質はエステル結合で様々な本体と結合しており、ここへリパーゼの触媒により加水分解が行われ、消化されていきます。が、リパーゼの本番は膵臓です。胃ではとりあえずの効果があればそれでいいのです。
さて、胃での消化を行い、胃の蠕動運動にて内容物と胃液を混ぜながら
ゲル状になるまで分解を繰り返します。
しかしながら、胃だけで全ての消化が行われるわけではなく、2~3時間ほど胃内部に貯留しています。
次の十二指腸~小腸で完全な消化、吸収を行います。