看護学生のための生化学:⑤膵リパーゼ

シリーズ【看護学生のための生化学】今回は脂質の分解:リパーゼ。
小腸における消化の様子を構造式を簡略化して必要最低限に絞って解説します。脂質とは、脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、膵臓から分泌されるリパーゼ、リポタンパクについてなるべくわかりやすく説明します。

脂質の分解:リパーゼ

前回、胃での胃液によって内容物がゲル状になり、タンパク質は分解され、小さな分子になることに成功しました。
ラーメンの中には油や焼豚なども入っていましたので、脂肪分も分解する必要があります。

目次

脂質とは

脂質とはエネルギーを貯蓄するための一つの形です。
豚が貯えていた脂肪を調理して人間の口へ入り、分解した後人間の脂肪となってエネルギーを貯蓄します。

脂質とは

脂肪は大きく分類して3つの種類に分けられます。

脂肪酸

脂肪酸は直鎖(ギザギザのCの連鎖)の形状をした炭化水素(C)と、一端ににメチル基(-CH3)、もう反対側にカルボキシル基(-COOH)が結合した構造をしています。

例:パルチミン酸の構造式
パルチミン酸の構造式

とても見にくくて面倒なのでこう書きます。

例:パルチミン酸の構造式 簡略版
パルチミン酸の構造式

シンプルになりましたね。

さらに脂肪酸は構造上2種類にわけられます。

● 飽和脂肪酸

飽和脂肪酸とは炭化水素の直鎖の途中に二重結合が全くないものをいいます。
パルミチン酸も飽和脂肪酸のひとつ。

常温において固形であることが多く豚の脂身などもそうです。
体内で生成することができるので摂取は必須ではありません。

● 不飽和脂肪酸

飽和脂肪酸とは炭化水素の直鎖の途中に二重結合があるものをいいます。

例:リノール酸の構造式
リノール酸の構造式

常温において液体であることが多く、サラダ油なんかは不飽和脂肪酸です。

中性脂肪 triglyceride

中性脂肪とは食物として摂取する大部分の脂質であり、トリグリセリド triglycerideと呼ばれます。(トリグリセライド、トリアシルグリセロールとの表記もあります。)
脂肪酸3つとグリセリン(グリセロールと呼ばれる事も)が合体したフォークの先の様な構造をしています。

トリグリセリドの構造式
中性脂肪:トリグリセリドの構造式

トリ tri はギリシャ語で「3」を意味する言葉でしたので、
このフォークのような構造を想像しやすいですね。

検査の時のTG値とはこの中性脂肪のことを示します。
肝臓でも合成されるため、肝機能の評価として見ることもできます。
また、食べ物によっても血中濃度が上がるため、栄養状態や小腸での吸収能力の指標にもなります。

リン脂質

リン脂質はちょっと複雑な形をしています。

リン脂質 構造

脂肪酸二つと、グリセリン、ホスホジエステル結合(-PO3-)でもって塩基と繋がっています。
ここで重要な構成は[疎水基]油に溶けやすい部分と[親水基]水に溶けやすい部分とを両方持っていることです。

リン脂質 疎水部分 親水部分

膵臓から分泌されるリパーゼ lipase

脂質の消化・吸収は大部分は小腸で行われます。
胃でゲル状になった内容物は胃の収縮などにより十二指腸に運ばれます。

脂質は大きな塊で存在するため、消化しやすい様とりあえずの小ささにする必要があります。
ここで胆嚢が収縮し、胆汁酸が分泌されます。
この胆汁酸と脂質が交じり合って「乳化」し、脂質を小さな粒にします。(とりあえずバラバラに…)

膵臓から分泌されるリパーゼ

ここで膵臓からもリパーゼ lipaseが分泌されます。
ギリシャ語の「lipos(脂肪)」+「ase(酵素)」からきています。(またギリシャ語・・・)

リパーゼは脂質を構成するエステル結合(-COO-)を加水分解する酵素です。

リパーゼは脂肪を加水分解する

脂質の大部分は中性脂肪(トリグリセリド)なのでこれをリパーゼで分解してみます。
加水分解なので水(-H -OH)を加えてエステル結合(-COO-)を分解してみましょう。

リパーゼによる加水分解
リパーゼによる加水分解
リパーゼによってエステル結合(-COO-)部分を分断します。
リパーゼによってエステル結合(-COO-)部分を分断します。
分断した箇所にすかさず水(-H  -OH)が結合し…
分断した箇所にすかさず水(-H  -OH)が結合し…
脂肪酸3個とグリセリンが出来上がりました。
脂肪酸3個とグリセリン

体内に貯蔵されている脂肪は必要時(エネルギーが欲しい時)に加水分解したり
脂肪として貯蔵したい時には脱水縮合してトリグリセリドとして存在します。

小腸での脂質の吸収、運搬:リポタンパク

脂質は遊離脂肪酸とグリセロールに加水分解され、小腸内壁の微絨毛上皮の粘膜細胞で吸収されます。

しかし、小腸の細胞に入った後、再度中性脂肪に再合成されます。(えっ、せっかく分解したのに…)
取り込んだ脂質は油であるため、血液内に溶け込めません。運搬用に形を変えるため再合成します。

血液中運搬用の形状:リポタンパク質

リン脂質は[疎水基]油に溶けやすい部分と[親水基]水に溶けやすい部分で出来たイカみたいな構造でしたね。

リン脂質 疎水部分 親水部分

このイカみたいなリン脂質やタンパク質で水に溶けない部分を覆い隠します。

リポタンパク質

この状態をリポタンパク質といいます。
リポタンパク質の状態で血液中を行き来するのです。

リポタンパク質の種類

リポタンパクにはそれぞれ機能によって種類があります。

  • カイロミクロン・・・食事で得た脂質の運搬(キロミクロンとの表記もあり)
  • VLDL…肝臓で合成された脂質の運搬
  • LDL…抹消組織へコレステロールを運搬する
  • HDL…抹消から肝臓へコレステロールを運搬する

焼豚の脂質は食事で得られたものなので
カイロミクロンとしてリンパ液、血液中に入り全身の細胞へ送られ、肝臓に送られ、必要が無ければ脂肪細胞に貯蓄されます。

次回は、③消化酵素アミラーゼの回で荒々しく分断したデンプンを
小腸で吸収出来る様、もっと小さくしてみましょう。

次回、膵アミラーゼと糖分解酵素

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